
2009年07月16日
婚活? なに、それ?
婚活? なに、それ?
電車で帰宅途中の女性。車内はほどほどに
混雑していて、彼女はつり革を片手に
今日、参加した合コンのことを考えていた。
〈 あーあ。今日も無駄足だった… 〉
〈 だけど、男の人って、なんであんなに露骨な
態度が取れるんだろう…今日だって、5人の
うち2人は目を合わそうともしなかっし… 〉
〈 まあ、あんなヤツら、こっちだってごめんだわ。
ぜんぜん、イケてないくせに… 〉
だけど、女性はそう強がりながらも、最近の
はやり言葉「アラフォー世代」にしっかりと
乗っかっている自分を情けなくも思い、なんとか
ならないかと、あせったりもする。
〈 学校を卒業して、もう18年か… 新卒のころは
まだ、バブル景気がはじけたばかりで世間は
うかれていたし… それから、ちょっとしたら、
今度は転職だのフリーターだの、なんか、まじめ
に正社員してるの小馬鹿にしてたし… 〉
電車が止まった。女性はちょうど目の前の座席が
空いたので、入れ替わりにそこに座る。
〈 それで、いつまでも不景気が続いたと思ったら、
今度は若い子たちの変わり身の早いこと!
普通の子はもちろんだけど、アイドルだって、
20歳そこそこのまだまだいけそうな子が
じゃんじゃんデキ婚!
もう、なにがなんだかわかんない、 〉
女性の思考は、ますますネガティブになっていく。
〈 あーあ、ほんと、私たちっていちばん貧乏くじを
引いた世代だな。若いうちは、何かとチヤホヤ
されてたけど、そうして油断しているうちに、
気がついたらあっという間に『 崖っぷち 』。
まったく、なんでこんなことになったんだろ… 〉
〈 なんかで読んだな。久しぶりに会った同級生が
赤ちゃんを抱いていたのを見て、その赤ちゃんが
突然『 マシンガン 』に見えたって、 いや、
『 ライフル 』だったな、 〉
その時、女性はメールか何かを受信したようで、
携帯電話を取り出すと内容を確認する。
そして、ふふっ、と含み笑いをすると、手短に
返信してさっさと電話をしまった。
彼女は思う。
〈 まあ、40近くもなって婚活するなんて夢にも
思わなかったけど、あせってる子も多いし、
今の流れはムードとしてはいいかもね。
赤信号、みんなで渡ればこわくない、か。
私だけが不幸だなんて思うのやめよう!
とにかく、がんばって戦わないと…… 〉
ところで、彼女が電車内で受信したメールの内容。
「○○ちゃん、来週の合コン連絡だよ。次はね… 」
2009年07月14日
あじさいの『 花言葉 』は?
あじさいの『 花言葉 』は?
6月の日曜日の午後。今日は梅雨も中休みで
空模様も朝から機嫌がいい。
そんな、さわやかな日に限って、横の
助手席に座る彼女の機嫌は、すこぶる悪い。
「今日、晴れてよかったね 」
「 ……… 」
「晩飯、なに食いたい? 」
「なんでも、いいよ… 」
「じゃ、ひさしぶりに寿司でも、 」
「ごめん。昨日の夜、食べた 」
「それじゃ、中華は? 」
「来月、7月なんだよね… 」
「それが、どうかしたの? 」
「あーあ。だから、海にも行きたいし、
水着だってビキニ着たいし… 」
「 ……… 」
男は、ものすごく困っていた。
いったい、この正体不明の機嫌の悪さは
なんなんだと、
〈 先週行った合コンがばれたのかな…
いや、待てよ。なんかの記念日、
忘れてたっけ… 〉
そんなことを考えながら、ふと、道端に
咲いている紫陽花が目に入り、男は、
なにか話のきっかけにでもと思い、言った。
「やっぱ、6月だよな。オレ、あじさい、
好きなんだ。雨降るのはイヤだけど… 」
「ふーん、あじさいね… 」
「どうしたの? 」
「ねえ、あじさいの花言葉、知ってる? 」
「いや、知らない。なに? 」
「あじさいの花言葉は『 移り気 』よ 」
「 ……… 」
〈 まずい! なんで、なんで今日にかぎって
すべりまくるんだよ! まずいな… 〉
そのまま、ふたりとも会話のきっかけを失って、
しばし、無言のまま時間だけが過ぎていく。
だが、そうしているうちに、携帯電話に届いた
一通のEメールを読んだとたん、彼女の態度が
豹変した。
ものすごく機嫌がよくなり、やたらと、芸能人の
ゴシップ記事など、たわいもないことを次々と
話しかけてくる。一方、男はそんな彼女の様子に
面食らい、あいづちをうつだけで精一杯だ。
そうして、今日の夕食も無事?終えて、男が
彼女を自宅前まで送った。その時、別れ際に
彼女が言った。
「あじさい、私も好きよ 」
「えっ、 」
「 それに、フランスの花言葉では、
『 忍耐強い愛情 』『 元気な女性 』だし。
じゃあね! 」
そう言うと、彼女はマンションの暗証キーを押して、
あっという間に中に消えていった。
