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2009年08月05日

なんでぺアシートなんだよ!


なんでぺアシートなんだよ!


「 あー、また、ドタキャンかよ…  」


そうつぶやくと、男性は携帯電話をパタンと閉じた。
そして、電話機前面のサブ画面で時間を確認すると、
今日、日曜日の夕方、これからどうして過ごそうかを
考えた。

男性は、つきあっている彼女と、よく日曜日の夕方に
待ち合わすことが多かった。
なぜならば、彼女はサービス業に従事しているため
土日の週末は休日ではなく、それで、お互い休日の
合わない2人は、その妥協点として日曜日によく
待ち合わした。
だが、どちらかと言えばそれほど約束を守る努力をしない
彼女は、よく待ち合わせ時間間際にメールで断りの連絡を
入れてきた。
一方男性は、よほど用事がないかぎり休日の昼間を
持て余し気味にすることが多かったので、ずいぶん早い
時間に待ち合わせ場所近くの繁華街に前もって出かける
ことが多かった。

「 さあ、誰かを呼び出すにも今からじゃなぁ…  」

そして男性は考える。時間は午後6時過ぎ。
今から1人で[ 食事兼お酒 ]をやるには少し時間が早く
もったいない気がする。

「 そうだな…、 あっ、そうだ。確か、近くに
  シネコンがあったはずだ…  」

男性は思った。今からシネコンに行って、もしうまく
上映開始時間が合えば、映画でも見てからかるく1杯
やって帰ろうと。
そしてその考えは正解で、男性がシネコンに行くと、
ちょうどその日の最終回、6時30分に始まる上映作品が
あり、また、その作品は男性が以前からまあまあ興味を
持っていたものだった。

「 OK! ばっちりだ! 」

さっそく男性は入場券売り場でチケットを買う。
その時、入場券売り場のちょっとおとなしいそうな
女の子が希望の席を聞いてきたが、男性は特にどこでも
よかったので、「 おまかせします 」と、言って
入場券を受け取った。

〈 ふーん、ここ、全席指定なんだ。
  でも、ってことは総入れ替えだな… 〉

そう思いながら男性は指定されたシアター入り口に
行く。すると、前回の上映はすでに終わっていて、
最終回の入場は可能だった。

〈 えーっと、Fの55は… えっ!  〉

男性が入場券に印字されたとおり席に行くと、なんと、
そこはカップル向けの『 ペアシート席 』だった。

〈 おいおい、なんでオレがペアシートなんだよ、
  なんかの間違いじゃねえのか! 〉

男性は、まず入場券の印字を確認した。合っている。
次に、シアター内の入場者の様子を見てみると、
シングルシートが6割に、ペアシートが8割ぐらいの
埋まりぐあいだった。

〈 ちょっと待てよ、オレだけひとりでペアシートって、
  どう考えてもおかしいよな。なんでなんだよ…  〉 

そこで男性はさらに考えた。 つまり、シングルシートも
もうすでにほとんど埋まっており、上映までに他の客が
バタバタと入ってくるのだと。

そして、6時 20分 上映 10分前。

男性の予想はみごとにはずれた。
上映開始時間は刻々と近づいてくるのにシングルシートは
ほとんどそれ以上埋まることはなく、その代わりに
ペアシートは少しずつ埋まっていき、やがて、ほとんど
満席状態になった。

〈 誰かと相席… と言っても誰もこねーし、 〉

そのうち、男性の思考は別の方向に向き出した。
それは、さっき入場券売り場にいた係りの女の子が、
変に気を利かして男性にペアシート席をあてがって
くれたのではないかと……


〈 あと、3分で始まるな…  うーん、ここ、
  絶対誰もこねーよな。 でも、こんなVIP待遇
  されても困るんだけどな…  〉

男性は、ひとりだだっ広いシートに座り考える。

〈 これって、絶対さっきの女の子にお礼を言いたい
  よな。でも、これが最終回だから、上映が終わって
  からじゃ遅い。たぶん、上映が始まったら入場券
  売り場も閉めるはず。うーん、どうしようか… 〉

6時 29分。 男性はいきなり立ち上がった。
そして、シアター内売店でポッキーを買うと、
そのまま出口に向かって走った。

出口で入場券の半券を見せて一時退場をお願いし、
それから入場券売り場に向かった。

〈 いた!  〉

さっきの入場券売り場の女の子はまだいた。
男性は、ほんの一瞬躊躇したが、それでも勇気を
出して言った。

「 あの、いい席をありがとう! 」

それだけ言うと、ポッキーを強引に入場券手渡し口から
手渡した。


ところで、どうして女の子がペアシートを男性にあてがった
のかはわからない。
また、男性は女の子に向かって言ったお礼とポッキーの
真意が女の子にうまく伝わったかもわからない。

でも、無事? 映画を見終わった男性は、すでに閉まって
いる入場券売り場を見ながら、
〈 今日はドタキャンもあったけど、まあまあいい日
  だったな。 さ、帰ろう、    〉
と、思いながら家路についた。






 

posted by jekugun at 22:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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