
2009年07月21日
生まれ変わりは「 ふとん 」?
生まれ変わりは「 ふとん 」?
「 ねえ、こんど生まれ変わるとしたら何がいい?」
「 えっ? 」
居間で彼女とテレビを見ていたときだった。
彼女が唐突に聞いてきたその質問に、男は
一瞬黙り込んだ。が、しかし、何もなかった
ような素振りであいづちをうった。
「 そうだな… 」
しかし、男の態度は誰が見ても明らかに
「うわのそら」で、彼の意識はどこか記憶の
かなたに飛んでいってしまったようだ。
男は、3年前にふられた彼女のことを
思い出していた…
「 あのね、こんど生まれ変わるとしたら、
何になりたい? 」
「 なんでもいいの? 」
「 なんでもいいよ。芸能人でも、スポーツ選手でも
動物でも、なんでも! 」
「 モノ… でもいい? 」
「 うん、いいよ 」
「 じゃ、ふとん 」
「 はあ、布団? 」
「 うん、ふとん 」
「 ………なに、それ? 」
「 いや、だってさ、ほら、オレ、会社で激務だから
いつも疲れているし… 」
「 だけど、布団はないでしょ、何かほかには? 」
「 そんな急に言われても、だからさ、いつもいつも
眠いのを我慢してるって言いたかっただけだよ 」
「 わかったわ。じゃ、布団でいい。でも、いつも
若い女の子が使ってくれるとは限らないわよ。
もし加齢臭がひどいおじさんだったら
どうするの? 」
「 ちょ、ちょっと、だから、ふとんはもういいって、」
「 それに、子供だとおねしょされるかもしれないし、
一人暮らしの子に万年床で引きっぱなしにされて
一生布団干しされないまま捨てられるかも
しれないし、あと、人のエッチをさんざん見せ
つけられたままなすすべもなく指をくわえて
黙っているだけ、 そんなのでもいいの?
「 いや、だからさ… (今日はそうきたか! ) 」
彼女はいわゆる「いじり」キャラで、いつも男の
ささいなミスなど、あげあしをとることでストレスの
発散をしていた。
一方、男のそのことをじゅうぶん承知しており、
彼女が絡んでくるうちは機嫌がいいのも知っていた。
「 ねえ、どうしたの? 急に黙り込んで… 」
「 あっ、いや、なんでもないよ。えーと、
生まれ変わるとしたら何か… だったね?」
「 そんなの、もういいよ、 それより、見て、
あのピン芸人! ほんと、バカ、 」
そう言った彼女は、テレビのバラエティ番組を指差して
大笑いしている。
〈 あー、この子もかわいくていい子なんだけどな…
だけど、「ふとん」に生まれ変わりたい、なんて
言ったら、「 はあっ、」って顔されて、あとは
会話が続かないだろうな… 〉
〈 前の彼女、たぶん、オレのこと、いじり飽きたん
だろうな… それに、今でもどこかで誰かを
いじりたおしてるんだろうな… 〉
男は、今でも以前の彼女に未練がいっぱいのようだ…
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