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2009年07月29日

誕生日 同日、3連発


誕生日 同日 3連発

居酒屋での会話 そのA



「 はい、これでオレの『蜂の一刺し、3連発』は終わり。
  で、今度はお前の番だぞ、  」
「 わかった、わかった。だけどさ、お前の話って、
  結局3人の女の子に「元彼」として暇つぶしの
  ネタにされただけだろ、 」
「 ま、そうだな 」
「 まあ、そうだなって、お前、涼しい顔してよく言うね、
  オレだったらそんなの耐え切れないけどな…  」
「 あのな、お前、女の子から電話がかかってきて
 『 ご飯、つれてって! 』だぜ。こんなおいしい話、
 なんでパスするんだよ! まあまあ、そんなことより
 お前の話を…  」
「 あっ、そうだったな。だけど、オレの話、お前のに
  比べてしょぼいけど、それでも…… 」
「 おいおい、言いだしっぺはお前だろ、さ、早く、 」
「 わかった。じゃ、言うけど、オレ、今までに誕生日が
  同じ子に3人会った…  」
「 え、じゃあ…  年も同じ? 」
「 いや、さすがにそこまではちがう。何月何日だけだ 」
「 ふーん、だけど、そんなのことちょっと無いよな… 」
「 だろ、 それでさ、一番目の子、この子、最初はオレに
  ものすごく尽くしてくれてさ、 それで、すっごく
  第一印象はよかったんだけどさ…  」
「 へぇ、じゃあ、その口ぶりだと、どっかで豹変でも
  したのかい? 」
「 いや、違う。そんなんじゃない。 その子、確かに
  オレにものすごく尽くしてくれるんだけどさ、それが、
  ある日ぱっと気づいた。つまり、その子はいつも
  自分がやりたいようにやっているだけで、オレが
  どうして欲しいかなんて全然考えていない子だった…」 


続きです…


「 なるほど、自己満足の世界だな。で、例えば? 」
「 そうだな、例えば、デートでなんか買ってあげた
  お返しに、後日、Tシャツとかをプレゼントして
  くれたんだけど…    」
「 それが、とんでもなく趣味に合わない、と、 」
「 そう。それで、申し訳ないけどその話題に触れない
  ようにして、もちろん着ることもない。すると… 」
「 そこで、機嫌が悪くなるわけだ、 」
「 いや、そうじゃない。それだったらすげーシンプルで
  いいんだけど、実際は、オレがそのTシャツを
  気に入らなかったのを察して別のを買ってきた。
  ところが…   」
「 やっぱり気に入らなかった、と、 」
「 そう、当たり。しかも、最初のよりも、もっと
  チャレンジャーなやつでさ、 まあ、終始そんな
  調子だったんで最後はいいかげん嫌になってさ… 」
「 ははっ、痛いな、それ。まあ、だいたい話の
  流れは見えてきた。つまり、お前、その子のことが
  トラウマになって、後日、同じ誕生日の子に会って
  ぞっとしたわけだ。でも、そんな話もめずらしい、」
「 まあまあ、続きも聞けよ。次の子はさ、同日誕生日が
  2度目だからそれほど驚かなかったけど、その子、
  異常に自分の誕生日をカウントダウンするわけ。
  すると、オレ、前の彼女のこともだんだん思い
  出してきてさ、なんか、真綿で首をしめられてる
  気分になってきてさ…   」
「 あはははっ、お前、面白い! いやー盛り上げって
  きたな…  すいません、こっち、生中、2つ! 」
「 で、さ、そろそろしめるけど、次の3人目はすげー、
  最近の話。お前、隣りの課の「○○ちゃん」、当然
  知ってるだろ! 」
「 えっ、○○ちゃんかよ、 すると、もしかして… 」
「 そう、その、もしかして。 オレ、自分で言うのも
  なんだけど、ものすげーがんばって彼女とご飯まで
  こぎつけたわけ。それで、なんか、自然に誕生日の
  話になって、すると…  」
「 同日誕生日3連発だったわけだ、 」
「 そう。そのとおり。ところが、オレもそこまで
  こぎつけるのに、ありとあらゆる手を使って苦労した
  わけだし、それで、そんなつまんねーことぐらいで
  ひるんでどうするんだって、自分で自分をふるい
  たたせたわけ。ところが…  」
「 どうしたわけよ? 」
「 そう、つまり、○○ちゃんな、オレが誕生日を聞いた
  とたん、一瞬固まったのを見逃さなかった、   」
「 ほう、それで? 」
「 それから、ダメ押しで指摘してきた。以前、付き合った
  彼女が私と同じ誕生日なんでしょ、って、 」
「 またまた痛いな。 で、 なんて答えたの? 」
「 それがさ、オレもとっさに、ここで変に隠し立て
  するとよけいドツボにはまりそうな気がしたんで、
  それで正直に答えた。すると…  」
「 はいはい、いいから先を言えって、 」
「 その後は、オレの昔話だけでさんざん盛り上がって、
  気がついたらその日のデートタイムはおしまい。
  それでも、なんとか次につなげようといろいろ試みた
  けど、結局、オレって彼女からしたら単なる
  おもしろい人で終わってしまったみたいだわ…  」
「 なるほどね。だけどさ、お前の話って、オレの
 『 蜂の一刺し3連発 』よりずっと痛いんじゃない? 」








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2009年07月28日

蜂の一刺し、3連発

蜂の一刺し、3連発


居酒屋での会話 その@


駅近くの繁華街にある某大手チェーン店の居酒屋。
店内は会社帰りのサラリーマンで混雑しており、
その一角で、2人組の会社員らしき若い男性が、
生ビールを片手に談笑している。
つまり、ごく、自然な光景がそこにあった。


「 なあ、いきなりだけど、 」
「 なに?  」
「 最近、なんか、ぞっとしたことってある? 」
「 なんだよ、急に?  」
「 だからさ、最近、ぞっとして背筋が寒くなったり
  したことってあるかって聞いてるんだよ、 」

すると、聞かれた男はビールジョッキを持ったまま
少し考えて、それから答えた。

「 まあ、あるにはあるけど、 」
「 へへっ、やっぱりあるんだ。じゃあ、言って
  みろよ、 」
「 べつにいいけど、だけど、お前、自分がなんか
  言いたいからそんな話ふったんだろ?   」
「 ま、それもあるけど、それより先を言え、先、 」
「 まったく、勝手なヤツだな。だけど、最初に言っとく、
  オレの話、聞いてもたいしてつまんねーから、  」
「 いいよ、ぜひ、聞かせていただきたい、 」
「 わかった、わかった。 じゃ、言う。 題して
  『 蜂の一刺し、3連発 』! 」
「 はあ、なんだ、それ?  」
「 だから言っただろ、 オレの話はオカルトでも
  ホラーでもないからつまんないって、 」
「 いいから続けろって、 」
「 わかった、それじゃ始めるけど、お前も知っての通り、
  オレ、今まで女の子に泣かされた経験多数、 」
「 知ってる、知ってる、 お前とは同期で長いもんな、 」
「 そして、その中のワースト3が……  」
「 あっ、わかった、その女の子たちが、みんな
  かたっぱしから蜂に刺されたんだろ、 」
「 ピンポン! はい、当たり。次、君の番! 」
「 おいおい、ちょっと待てって、それがなんで
  ぞっとする話なんだよ?  」 
「 だから、つまんねー話だって、  」
「 つまんねー、か、面白いかはオレが決めるって、
  はい、続きを、 」
「 ホント、しつこいなー だけどさ、これって
  いちいち説明すると、ホント、長いんだけど、 」
「 じらすなって、 前置きはいいから、さっさと
  本題に入れってば、 」
「 うーん、じゃあ、言う。 あのな、1人目の
  女の子は家がけっこう金持ちの子で、 」
「 おっ、いいね、  逆玉じゃん!  」
「 そんないいもんじゃないって。 続けるけど、
  それで、その子、友だちと川にキャンプ兼カヌーに
  行って、そこで、食事の準備かなんかの最中に
  運悪くスズメバチの巣に触っちゃったらしくて… 」
「 あちゃー、痛そう。それで、けっきょくスズメバチに
  襲われたってこと? 」
「 うん、ふもとの救急病院の駆け込んだって。
  なんでも、ほっとくと最悪ショック死することも
  あるらしい。それでさ、彼女の場合、親が金持ち
  だし、性格がすげーきつい子だったんで、オレ、
 『 女王蜂が兵隊ハチに 襲われてどうすんだよ、』って、
  内心、ものすごく笑っちゃって……  」
「 うわっ、ひど! それで、次は? 」
「 えーっと、次か…  次は確か、 あっ、そうだ、
  2番目の子も山でバーべキュー中にスズメバチ、 」
「 お前の昔の彼女たち、ちょっと危なくないかい? 」 
「 まあ、待てって、 それでその子、いっしょにいた
  男友だちに[ 川に飛び込めっ、]って言われて
  そうしたらしい。 もちろん、着替えなんか全然
  持参もしてないのに、  」
「 あっはっはっ、 そりゃ災難だな、それで、次は? 」
「 おう、これが最後だ。最後の子は、なんかよく
  わかんねえーけど、その子の母親とすげえ仲良しで
  いつもいっしょに行動する子でさ、  」
「 ふんふん、お母ちゃんと仲良しね。ま、よくある話だ、
  それで、どうなったの?  」
「 その日も、母親の運転手役で植木に使う野生の
  植物あさりをするために、山へ行ったらしい… 」
「 それで、『みたび』スズメバチの攻撃を…  」
「 そう、それ!  だけどさー、 こんな話が3連発も
  あるといいかげん、ぞっとしたわ。まあ、オレは
  その場にはいなかったからいいけどさ、 」
「 ふ−ん。 で、話の結論として、お前のことを
  さんざん泣かした彼女たちが、お前に代わって
  スズメバチによってお仕置きされたってこと? 」
「 まあ、結果的としてはそういうことになるかな。
  ちょっと可哀そうだけどさっ、  」
「 いや、ちょっと待て! お前の話にはひとつ『穴』が
  ある。お前、その話、誰か他人から聞いた話か? 」
「 いや、3つともそれぞれ本人の口から直接聞いた、 」
「 もうひとつ聞く! その3人、お互いが知り合いで、
  お前の知らないところでつながっているとか? 」
「 いや、それは絶対にありえない。オレが全然関係の
  ないところでそれぞれ知り合った子たちだから、 」
「 ふーん、わかった。じゃあ、『穴』を指摘するぞ、
  その子たち、お前をさんざんふりまわして泣かせる前に
  スズメバチに襲われただろ、 だったら順番が逆だから
  お仕置きってはちょっとおかしい! 」
「 はいはい、ナイス指摘です。でも、お前、そんなに
  飲んでて、よくそんなこまかいことまでチェック
  できるな!  ホント、感心するわ、 」
「  へへっ、楽勝じゃん!  だけど、お前、確かに
  『 スズメバチ3連発 』なんて話、めったに
  聞かないけど、その話、そんなに怖い話か?  」
「 まあ、待てって、 まだ話のオチを言ってないから、 」
「 話のオチ? 」
「 うん、話のオチ。じつは、さっきのハチに刺された話、
  これって全部、彼女たちと完全に別れてから聞いた話
  なんだ。しかも、その時彼女たち、さっさと新しい男と
  付き合ったり、結婚なんかもしちゃっているのに、
  それでもずるずる彼女たちからコンタクトがあって、
  その時にメシ食ったりしながら聞いた話なんだ。
  ホント、女の人は怖いよ……  」
 









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2009年07月27日

育児! 育自! 育慈!

育児! 育自! 育慈!

「 しかし、あんたがね…  」  

平日の午後、比較的新しい、2階建ての
2DKアパートの1室で2人の女性が
たわいもないおしゃべりをしている。
そして、部屋の片隅にはベビーベッドが
置いてあり、そこには赤ちゃんが眠っている…

「 それでさ、一般的な話だけど、そんなに
  家にこもっていて育児ノイローゼなんかに
  ならないかい?  」
「 ううん、大丈夫だよ。私、今の生活、かなり
  気にいってるから…  」
「 だけどさ、あんた、あれだけ「ギャル」を通す
  ことに命かけてたのに、こんなんじゃ退屈だろ?
  それに、ダンナだって帰りが遅いし、 」
「 しかたないよ。長距離(運転手)やってるから。
  だけどね、子供ってホントにかわいいよ。でも、
  ぐずった時は宇宙人かっ、て思うぐらい
  理解不可能だけど、     」
「 あははっ、宇宙人か、まっ、今のところは
  あたしの知らない世界だな…    」


そうして、そろそろ夕飯を準備する頃になり、
友人らしき女性は帰っていった。
  
ところで、現在育児の真っ最中らしき女性は、
実際、かなり充実した毎日を送っていた。

なぜならば、彼女は妊娠期間中にたまたま始めた
ブログの制作がけっこう性に合っていたようで、
どうしても自宅で過ごす時間が長い彼女にとって、
ネットやブログによる外の世界との接点はものすごく
新鮮だった。
だが、妊娠がわかるまでの彼女の女子高時代は、
いかに制服のスカートを短くして繁華街を闊歩するか、
という、文字通り体をはったアナログ的な自己主張を
貫き通す毎日だった。
しかし、当時つき合っていた彼と妊娠を機に結婚し、
現在に至っている。


「 あっ、このコメント、ちょっとイヤだな…  」

パソコンの操作については、比較的すんなりと
上達できた彼女だが、実際のところ、ブログの
立ち上げに関しては少し遠回りをした。
例えば、最初に使ったブログサービスは、
プロバイダーによる完全フリーのもので、
広告がそれほど大きくないのが気に入って
利用を始めたが、実際に使用してみるとブログ
作成処理に時間がかかり過ぎるのに嫌気をさして、
それで思い切って他のサービスに乗り換えた。

また、現在までに複数のブログを立ち上げた
彼女だが、操作ミスでせっかく書いた記事を
一瞬のうちに消し去ってしまったことなど、
これまでに、笑うに笑えない失敗談もかなり
たくさんある。

もちろん、ネットの世界は基本的に相手の顔が
見えない仮想(デジタル)の世界には違いないが、
それでも、慣れてくればなんとなく嘘と真実の区別も
見えて気がするし、それに、今の彼女にとって最大の
メリットは、いくらネットに没頭していてもひとたび
赤ちゃんが泣き出せば、なにがなんでも現実の世界に
引きずり戻されることだ。

彼女は、今の生活をけっこう気に入っている。










posted by jekugun at 22:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2009年07月23日

黒猫のタンゴ

黒猫のタンゴ


〈 なんで、こんなところにネコが…  〉

秋の気配が日ごとに深まる日曜日の朝、
男性は、日の出がずいぶん遅くなったと思いながら
自宅近くの駅に行った。
その駅は立体高架構造になっており、まず、
エスカレーターで改札口まで上がる必要があり、
さらに改札を通過してからプラットホームまで、
もういちどエスカレーターか階段で上の階に
上がらなければならなかった。

そして、駅に到着した男性は駅、高架下一階の
連絡通路で、ほとんど黒猫なのだが、唯一、
鼻の横に白い毛が混じっているネコに遭遇した。

もちろん男性は、日曜日の早朝、そこの駅にネコが
いることにものすごく違和感を覚えたが、だからと
いって自分には関係のないことだとも思ったので、
そのままエスカレーターに乗って改札口まで行き、
そして、時刻表を確認してから目的地方向の
プラットホームに上がった。


ところで、男性の外出目的は婚約者と会うため
なのだが、彼女が指定してきた時間は日曜日の
ランチタイムで、場所は彼女の自宅の最寄り駅だった。

〈 あーあ、せっかくの日曜日なのに昼メシかよ。
  なんか、まずい雰囲気だよな…        〉

男性はうすうす感じていた。彼女とは、もうすでに
結納も済ませて指輪も交換済みなのだが、なぜか、
式の日取りなど具体的な日程が固まってくるにつれて
彼女の態度が硬直してきていることを… 
だが、時間がその歩調をゆるめてくれることなど
絶対になく、結婚式の日取りは着実に近づいてきていた。

〈 やっぱ、見合い結婚はダメだな…  
  お互い、妥協の産物だしな…         〉


……続きです

彼女の自宅はとなりの県にある。そして、そこまでは
高速道路で1時間強ぐらいなのだが、電車でいくと
乗り継ぎが悪く2時間以上かかる。
だが、「今日の雰囲気だと間違いなく車が必要ない」
と、思った男性は、少し早起きして電車で出かけること
にした。

男性は電車に乗った。だが、その車両はたまたま
特急電車の通過待ちをしており、日曜日の早朝のため
車内はがらがらで乗客は15人ぐらいしかいなく、
男性は、しばらくは発車しそうにもないその車内で、
今日、彼女とどんな話の展開になるのかをぼーっと
考えていた。

〈 あーあ、この半年、時間のムダだった… 〉
〈 悩むぐらいならさっさと断ってこいって、 〉
〈 半年間に断った合コン、もったいない… 〉



「 おい、あのネコ、なに? 」
「 ほんとだ。なんで、こんなところに? 」

その時、突然聞こえてきた会話によって男性は
われにかえった。その会話の主は電車入り口付近
にいた10代のカップルで、おそらく一晩中遊んで
これから朝帰りするのだろう。だが、どうも帰るのは
男の子だけのようで、相手の女の子は電車には
乗らず、ちょうど入り口をはさんで今朝の別れを
惜しんでいた。

そして、男性も反射的に車外、プラットホームに
目をやると、そこには、まさしくさっき一階の
連絡通路で見た「98%黒猫」がいた。

〈 え、うそだろ! ここ、確か3階…だったよな、〉

だが、その黒猫はみんなの関心や疑問などいっさい
お構いなしで、さらに入り口付近のカップルの足元を
かすめるようにして、とうとう車内に乗り込んできた。

[ ???????????      ]

男性を含む、車内にいた全員の乗客は黒猫に
釘付けになった。
だが、それと同時に車内の雰囲気は
「 面倒にかかわりたくない 」を感じさせる空気に
急変し、誰もが黒猫に近寄ろうともしなかった。
そして、そのようにものすごく変な緊張感が漂う車内で、
なぜか黒猫は、少しずつ男性のもとに近づいてきた。

〈 ちょ、ちょっと、こっちに来るなって、 〉

だが、男性の願いも虚しく、黒猫は男性の足元まで
来ると、なんと、男性の座っているベンチ座席の横に
ひょいと飛び乗った。

「 ちょっと、待て、俺の猫じゃない! 」

思わず叫ぶ男性。そして、その瞬間、車内は爆笑の渦。
だが男性は、この場での自分の窮地を収束させるために、
思考をフル回転させた。

まず、その黒猫を抱きかかえて、それから入り口付近に
いたカップルのところに行き、そして男の子に聞いた。

「 ねえ、彼女、いっしょに帰らないよね?
  ここの子? 」
「 あっ、はい、そうですけど…  」

次に男性は、女の子のほうに向かって、

「 ねえ、この子、たぶん迷いネコだから、このまま
  電車で行っちゃうとまずいよねー、 それで、
  わるいけど、この電車が出たら、この子、
  駅の外ではなしてよ、 」
「 えっ、えー、いいですけど…  」
「 じゃ、おねがいね……   」





婚約者との話を終えて、来た時より指輪の分だけ
荷物を増やして帰路につく男性。

〈 やっぱり婚約解消か…  でも、かえって
  さっぱりしたな。 このまま、お互いが
  煮えきれないまま結婚したって、先では
  長続きしないのが見えてるし… 〉   

〈 だけど、朝のネコ、あれ、いったいなんだっただろ、
  なにかのお告げ… それにしてもリアルすぎる… 〉


どうやら男性の思考は、婚約解消したことより、
「日曜日の朝にまとわりつかれた黒猫」のことで
完全に占領されているようだ。











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2009年07月21日

生まれ変わりは「 ふとん 」?


生まれ変わりは「 ふとん 」?



「 ねえ、こんど生まれ変わるとしたら何がいい?」

「 えっ? 」

居間で彼女とテレビを見ていたときだった。
彼女が唐突に聞いてきたその質問に、男は
一瞬黙り込んだ。が、しかし、何もなかった
ような素振りであいづちをうった。

「 そうだな…  」

しかし、男の態度は誰が見ても明らかに
「うわのそら」で、彼の意識はどこか記憶の
かなたに飛んでいってしまったようだ。

男は、3年前にふられた彼女のことを
思い出していた…  




「 あのね、こんど生まれ変わるとしたら、
  何になりたい?  」
「 なんでもいいの? 」
「 なんでもいいよ。芸能人でも、スポーツ選手でも
  動物でも、なんでも! 」
「 モノ…  でもいい? 」
「 うん、いいよ     」
「 じゃ、ふとん 」
「 はあ、布団? 」
「 うん、ふとん  」
「 ………なに、それ?  」
「 いや、だってさ、ほら、オレ、会社で激務だから
  いつも疲れているし…  」

「 だけど、布団はないでしょ、何かほかには? 」
「 そんな急に言われても、だからさ、いつもいつも
  眠いのを我慢してるって言いたかっただけだよ 」
「 わかったわ。じゃ、布団でいい。でも、いつも
  若い女の子が使ってくれるとは限らないわよ。
  もし加齢臭がひどいおじさんだったら
  どうするの?  」
「 ちょ、ちょっと、だから、ふとんはもういいって、」
「 それに、子供だとおねしょされるかもしれないし、
  一人暮らしの子に万年床で引きっぱなしにされて
  一生布団干しされないまま捨てられるかも
  しれないし、あと、人のエッチをさんざん見せ
  つけられたままなすすべもなく指をくわえて
  黙っているだけ、 そんなのでもいいの?  
「 いや、だからさ… (今日はそうきたか! ) 」


彼女はいわゆる「いじり」キャラで、いつも男の
ささいなミスなど、あげあしをとることでストレスの
発散をしていた。
一方、男のそのことをじゅうぶん承知しており、
彼女が絡んでくるうちは機嫌がいいのも知っていた。


 


「 ねえ、どうしたの? 急に黙り込んで…  」
「 あっ、いや、なんでもないよ。えーと、
  生まれ変わるとしたら何か…  だったね?」
「 そんなの、もういいよ、 それより、見て、
  あのピン芸人! ほんと、バカ、     」

そう言った彼女は、テレビのバラエティ番組を指差して
大笑いしている。

〈 あー、この子もかわいくていい子なんだけどな…
  だけど、「ふとん」に生まれ変わりたい、なんて
  言ったら、「 はあっ、」って顔されて、あとは
  会話が続かないだろうな…          〉


〈 前の彼女、たぶん、オレのこと、いじり飽きたん
  だろうな… それに、今でもどこかで誰かを
  いじりたおしてるんだろうな…         〉


男は、今でも以前の彼女に未練がいっぱいのようだ…




   
  











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2009年07月17日

ギャルは苦手だ…

 
 ギャルは苦手だ… 

男性にはささやかな楽しみがある。
天気のいい日曜日の午後、郊外の比較的
静かで雰囲気のいいマクドナルドへ、
わざわざ車を走らせてお茶をすることだ。

だが、彼女や友人とそこに行くのではなく、
彼の愛犬、ミニチュアダックスの『 フク 』
と行くのがルールであって、それがもし
フク以外の他の誰かと行くのなら、そこに行く
意味なんて全然ない。


さて、今日も天気がよく気持ちのいい午後を
過ごせそうなので、男性はフクと一緒に車に
乗った。そして、最初に男性はフクを店舗先
に設置された屋外用テーブルとイスのところ
に行き、フクのハーネスをイスに結んだ。
もちろん、利口なフクは、そこで待っていなさい
と言えばずっと待っているので、そんなことを
する必要などないのだが、一応、念のため。

そして、店内で注文したメニューを受け取って、
外で待っているフクのもとへ戻る。ただし、
男性のものだけ注文し、フクのぶんはいつも
持参している。
ドッグフードやミネラルウォータなど、
そのつど違うが、体に悪いので、フクには
人と同じものは絶対にあげない。

おもてに出ると、そこにはフクといっしょに
小学校の4,5年生ぐらいの知らない女の子が
2人いた。よくある光景だ。
もちろん男性は気にせず、イスにすわってフクの
ハーネスをほどいた。そして、注文したコーヒーを
飲みはじめる。

「 おじちゃん、この子、名前は? 」
「 フク 」
「 あー、フクちゃんか! 」

そうして、2人の女の子は再びフクと遊びはじめた。
だが、どうも様子がおかしい。
1人の女の子は子供らしく?フクに夢中なのだが、
もう1人の女の子はそれほど犬が好きではない
みたいで、いつの間にかノートパソコンで書き物を
している男性に興味を示している。

「 おじちゃん、 」
「 うん? 」
「 どうして、サンダルなのに靴下はいてるの? 」
「 え、なんで? 」
「 だって、おじちゃん、サンダルと靴下だから 」
「 ………  」
「 おじちゃん、サンダル、素足ではいたら
  すごく気持ちいいよ!  」

〈 おいおい、この子、まだ小学生だろ、
  それじゃギャル目線だって、     〉

男性は世間一般で言われる女子中高性『 ギャル 』
が大の苦手だった。それで、理解不可能な
彼女たちの存在など、最初から見ないふりを
して無視するのが得策だと考えていた。
もちろん、できる限り関わりたくなかった。

「 おじちゃん、フクちゃんに( マック )ポテト、
  あげちゃ、だめ? 」

「 ごめんね。フク、すぐ、おなかが痛くなるから… 」
〈 おいおい、だめだって。フクの寿命が縮む、 〉

「 ふーん、そうなんだ… でも、なんか欲しそう… 」
〈 あたりまえだろ、あー、この子たちの
  保護者はどこ?    〉

「 えーっと、お父さんやお母さんは? 」
「 いないよ。おうち、近くだし、 」
〈 地元の女の子だって、最悪。うーん…  〉

「 じゃ、ソフトクリームでも食べる?
  おじちゃんが買ってあげるから買ってきて? 」
〈 そのあいだに逃げよう…  〉

「 ううん、さっき食べたからいらない。
  それに、ここでソフトクリーム食べたら
  フクちゃんが欲しがるからかわいそうだよ! 」
「 ………   」
〈 知ってたらポテトをやるなんて言うなよ、 〉
  
その時、とうとう男性は奥の手を出した。

「 あ、ごめんね。フク、そろそろウンチの時間だ 」
「 えっ、ウンチ? 」
「 うん。ウンチ。フクね、うちでしか
  ウンチしないから。それじゃ、  」
「 ふーん、そうなんだ。 じゃ、おじちゃん、
  また、きてね!  」
「 はいはい、またね 」

そう言うと、男性はノートパソコンをあわただしく
片付けて、コーヒーの紙コップをゴミ箱に捨てて
その場をあとにした。


帰りながら男性は思う。

〈 まだ小学生なのに早いな――。 
  だけど、どっちにしてもギャルは苦手だ… 〉












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2009年07月16日

婚活? なに、それ?


 婚活? なに、それ? 


電車で帰宅途中の女性。車内はほどほどに
混雑していて、彼女はつり革を片手に
今日、参加した合コンのことを考えていた。

〈 あーあ。今日も無駄足だった… 〉

〈 だけど、男の人って、なんであんなに露骨な
  態度が取れるんだろう…今日だって、5人の
  うち2人は目を合わそうともしなかっし…  〉

〈 まあ、あんなヤツら、こっちだってごめんだわ。
  ぜんぜん、イケてないくせに… 〉

だけど、女性はそう強がりながらも、最近の
はやり言葉「アラフォー世代」にしっかりと
乗っかっている自分を情けなくも思い、なんとか
ならないかと、あせったりもする。

〈 学校を卒業して、もう18年か… 新卒のころは
  まだ、バブル景気がはじけたばかりで世間は
  うかれていたし… それから、ちょっとしたら、
  今度は転職だのフリーターだの、なんか、まじめ
  に正社員してるの小馬鹿にしてたし… 〉
 
電車が止まった。女性はちょうど目の前の座席が
空いたので、入れ替わりにそこに座る。

〈 それで、いつまでも不景気が続いたと思ったら、
  今度は若い子たちの変わり身の早いこと!
  普通の子はもちろんだけど、アイドルだって、
  20歳そこそこのまだまだいけそうな子が
  じゃんじゃんデキ婚!
  もう、なにがなんだかわかんない、      〉
 
女性の思考は、ますますネガティブになっていく。

〈 あーあ、ほんと、私たちっていちばん貧乏くじを
  引いた世代だな。若いうちは、何かとチヤホヤ
  されてたけど、そうして油断しているうちに、
  気がついたらあっという間に『 崖っぷち 』。
  まったく、なんでこんなことになったんだろ… 〉

〈 なんかで読んだな。久しぶりに会った同級生が
  赤ちゃんを抱いていたのを見て、その赤ちゃんが
  突然『 マシンガン 』に見えたって、 いや、
  『 ライフル 』だったな、          〉 

その時、女性はメールか何かを受信したようで、
携帯電話を取り出すと内容を確認する。
そして、ふふっ、と含み笑いをすると、手短に
返信してさっさと電話をしまった。

彼女は思う。
〈 まあ、40近くもなって婚活するなんて夢にも
  思わなかったけど、あせってる子も多いし、
  今の流れはムードとしてはいいかもね。
  赤信号、みんなで渡ればこわくない、か。
  私だけが不幸だなんて思うのやめよう!
  とにかく、がんばって戦わないと……    〉



ところで、彼女が電車内で受信したメールの内容。

「○○ちゃん、来週の合コン連絡だよ。次はね…  」












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2009年07月14日

あじさいの『 花言葉 』は?

 
あじさいの『 花言葉 』は? 

6月の日曜日の午後。今日は梅雨も中休みで
空模様も朝から機嫌がいい。
そんな、さわやかな日に限って、横の
助手席に座る彼女の機嫌は、すこぶる悪い。

「今日、晴れてよかったね 」
「 ………    」
「晩飯、なに食いたい? 」
「なんでも、いいよ…  」
「じゃ、ひさしぶりに寿司でも、 」
「ごめん。昨日の夜、食べた 」
「それじゃ、中華は? 」
「来月、7月なんだよね… 」
「それが、どうかしたの? 」
「あーあ。だから、海にも行きたいし、
水着だってビキニ着たいし… 」
「 ………  」

男は、ものすごく困っていた。
いったい、この正体不明の機嫌の悪さは
なんなんだと、

〈 先週行った合コンがばれたのかな… 
  いや、待てよ。なんかの記念日、
  忘れてたっけ…       〉

そんなことを考えながら、ふと、道端に
咲いている紫陽花が目に入り、男は、
なにか話のきっかけにでもと思い、言った。
  
「やっぱ、6月だよな。オレ、あじさい、
好きなんだ。雨降るのはイヤだけど… 」
「ふーん、あじさいね… 」
「どうしたの? 」
「ねえ、あじさいの花言葉、知ってる? 」
「いや、知らない。なに? 」
「あじさいの花言葉は『 移り気 』よ 」
「 ………  」

〈 まずい! なんで、なんで今日にかぎって
  すべりまくるんだよ! まずいな…  〉

そのまま、ふたりとも会話のきっかけを失って、
しばし、無言のまま時間だけが過ぎていく。
だが、そうしているうちに、携帯電話に届いた
一通のEメールを読んだとたん、彼女の態度が
豹変した。
ものすごく機嫌がよくなり、やたらと、芸能人の
ゴシップ記事など、たわいもないことを次々と
話しかけてくる。一方、男はそんな彼女の様子に
面食らい、あいづちをうつだけで精一杯だ。

そうして、今日の夕食も無事?終えて、男が
彼女を自宅前まで送った。その時、別れ際に
彼女が言った。
「あじさい、私も好きよ 」
「えっ、 」
「 それに、フランスの花言葉では、
『 忍耐強い愛情 』『 元気な女性 』だし。
 じゃあね! 」

そう言うと、彼女はマンションの暗証キーを押して、
あっという間に中に消えていった。





        


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posted by jekugun at 17:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記