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2010年03月07日

「店内でお召し上がりでしたら、Sサイズがお得になっています




「◆◆さん、やばいよ、これ、桁ひとつ間違えてる」
「えっ、本当ですか、申しわけありません、 」

次の訪問先へ移動途中、つい、さっき見積もりを
送ったばかりのクライアントから携帯に電話があった

「こんなの通したら、おたくの会社、つぶれるよ。
まったく、気がついたのが僕だったからいいけど… 」
「すみません、至急、再提出しますので、 」
「うんうん、わかった。じゃ、30分以内ね 」
「承知しました… 」

そうして男は、さっそく再見積もりの作業を
するための場所を探した。
ところで、最近は外出先でのネット回線環境も
充実しており、もちろんモバイルパソコンの
性能も申し分ないので、このように緊急で作業を
行わねばならないときでも、どこかのカフェに
飛び込めば大体の用事は処理できる。

「ホント、便利になったな… 」

男は、すぐに道路沿いにマクドナルドの
店舗を見つけ、そして中に入ろうとした時、
ちょうど入り口あたりで小銭入れが落ちて
いるのを見つけた。

「あっ、 」

男はその小銭入れを拾い上げて中を見る。
すると、その中には数枚の小銭と、何枚かの
クレジットカードが入っていた。
〈 あーあ、こんなところでジョーカー
 引いちまった。まったく、急いでいる時に
 限ってこんなの見つけちゃうんだな…  〉

男は瞬間、その小銭入れをその場所に
放置したくなったが、そんなことをしても何の
解決策にもならないのはわかっているので、
仕方なく、店舗に入って近くの交番の場所を聞いた。

「いらっしゃいませ! 」
「あの、ちょっとごめん。そこで財布拾ったんで、
近くに交番は… 」
「えっ、 あのっ、 」

対応してくれた店員の女の子は、予期せぬことを
聞かれてちょっとパニくっている。
その、少女独特の、顔を紅潮させながらの
一生懸命さが「けなげ」でかわいい。

「じゃあ、また来るね」
そうして男は、近くの交番で小銭入れを
まるで投げつけるように届け出ると、
急いで再びさっきの店舗へ戻った。

注文カウンターは2ヶ所開いており、
片方はさっきの女の子だ。
男は、列の最後にならび、ほどなくして、
偶然さっきの女の子がいるカウンターに
で注文をした。

「あっ、さっきの! 」
「うん、行ってきた。さっきはありがとうね。
 それで、ホットコーヒーのMサイズを。
それと、トレーもいらない 」
「ミルクと砂糖はどうなされますか? 」
「それもいらない」
「はい、わかりました。では、
 店内でお召し上がりですか? 」
「うん、そう 」
「それでしたら、コーヒーのおかわりは自由ですので、
 Sサイズはいかがですか? 」
「えっ、 あ、ありがとう。じゃ… Sで 」
「かしこまりました 」

男は、肝心の再見積もりをさっさと
作り直すと、相手先のクライアントへ
メールに添付して再提出した。

そうして、コーヒーをおかわりすることも
なく、また、さっきの女の子と目が合う
ことも店舗を出た。

次の訪問先に向かいながら男は思う。
〈 あー、やられた。
  あんな接客マニュアルもあるんだな… 
  でも、あの子、すごくかわいかった。
  まったく、おじさん、『君の瞳に完敗』です  〉







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2009年09月24日

回転寿司のレシート、2皿・210円也



回転寿司のレシート、2皿・210円也


え、なんだろう、これ…

過労のために10日間ほど緊急入院した
女性が、退院後自宅に戻って荷物を整理して
いると、洗濯物を詰めこんだレジ袋の中から
一枚の意味不明なレシートを見つけた。

「回転寿司のレシート、2皿、210円???」

地方から東京のイベント企画会社に就職して
約10年、彼女は毎日激務に追われていた。
また、この数年は景気に悪化に伴って人員も
削減され、残ったスタッフだけで以前と同じ
内容の仕事をこなさなければならなかった。
そして、そんな昼夜逆転の生活を続けていく
うちに、とうとう彼女の体が悲鳴を上げた。
救急病院に担ぎ込まれた彼女を急性胃炎と
診断した医師は彼女に「即入院」をつげた。

「この日付って、入院した次の日だな… 」

東京でひとり暮らしする女性にとって、
いざという時に頼れるのはやはり実家の
両親でしかなかった。しかし、こんな事態で
男親はそれほど頼れる存在にはならず、
そうなると当然彼女は母親に無理を頼む
しかなかった。しかし、彼女の母親は
ずっと専業主婦を続けてきた人でそれほど
行動力があるわけでもなく、このような
状況下で、地方からひとり上京してきて娘の
付き添いをするのには少々無理があった。
しかし、連絡を受けた女性の母親は、
入院した翌日には始発の新幹線を乗り継いで、
午前中には彼女が入院する病院まで駆けつけた。
そして、彼女が住むアパートの鍵を受け取ると、
数時間後には必要なものをそろえて戻ってきた。
もちろん、足りないものはすべて買い揃えて。

だが、実家でも祖母が健在のため母親もそれほど
長く家を空けるわけにはいかず、次の日、病院で
彼女の容態が落ち着いたのを見届けた母親は、
担当医師への挨拶もそこそこに済ますと、
せわしなく実家に帰っていった。

さて、女性は再びレシートの詳細を見る。
すると、そこには頼んだメニューが
「 イカ、海老 」と、あり、そして、
時刻はちょうど女性の母親が必要なものを
そろえている頃で、また、その店舗は
入院した病院のすぐ近くだった。

「 そうか、お母さん、ひとりで回転寿司屋に
  入ったんだ…  」

女性は思った。彼女の母親はアパートを往復
しながら必要なものを揃える途中、少しでも
何か食べないと体力を落とすことを懸念して、
そこで、もっとも時間をかけずに効率よく
何かを口にするために、ひとりで回転寿司店に
立ち寄った、のだと。

また、女性はこうも思った。
平日の午後に初老の女性が、ひとりで
回転寿司店に足を踏み入れることが
どんなに勇気のいることか、も。

もちろん、これはあくまでも女性の
推測であって真実がどうかはわからない。
だが、女性はそのことを母親に聞く
つもりなどなかったし、実際のところ、
本当はどうなのかなんてどうでもよかった。

「 今度の連休、帰ろうかな… 」

レシートを手にしながら、女性は
ひとことつぶやいた。









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2009年08月09日

天然ボケ? だけど大丈夫!


天然ボケ? だけど大丈夫!


兄は、世間一般でいう、天然ボケだ。
だけど、大きな会社で毎日仕事をがんばっているし、
ちゃんと結婚して子供もいる。
今日は、そんな兄の話を少しだけ……

「 もう、お兄ちゃん、また遅刻だよ、 」
「 すまん、つい、とまらなくて、 」

今日は日曜日の午後。
私は、母の代理でおじいちゃんの13回忌の打ち合わせを
するためにお寺を訪れていた。
そして、兄にも同席を求め、兄はそのことを快く承諾して
くれたのでお寺で待ち合わせの約束をしたのだが、
彼は約束の時間には来なかった。
それで、しかたなく、私はひとりでお寺の事務員さんと
打ち合わせを済ませた。もちろん、兄が来るのをしばらく
待つには待ったが、いっこうに姿を見せない兄にしびれを
切らした私は、とうとう彼が来るのをあきらめて
打ち合わせを始めた。
そうして、おおかた打ち合わせを済ました頃に、
やっと兄は姿を現した。

「 とまらない? ふん、またパチンコでしょ、 」
「 えっ、いや、その、午前中だけの予定が、
  ついつい調子がよくてさ、 すまん、すまん、  」
「 もう、メールしても返事がないから変だと思ったら、
  また? いいかげんにしたら、 でも、お母さんが
  いなくてよかったね。また怒られるとこだったよ、 」
「 まあな。でも、今日勝った分、なんか晩メシうまいもん
  でも、おごるからさ、 それでチャラにしてよ 」
「 えー、お兄ちゃん大丈夫! 今日、日曜日だよ。
  早く帰らないと( お嫁さん )怒るでしょ、 」
「 大丈夫だって、 それより打ち合わせはどこまで? 」

と、兄はいつもこんな調子で悪びれることもなく、
終始自分のペースで行動する。
それから、兄の思考の中には時間の概念なるものが
ないのか、どんなにせっぱ詰まってもあわてたりしない。
まったく、良く言えば度胸が据わっているのだろうが、
悪く言えば、ただ単にニブいだけなのかもしれない。

だけど、こんな兄の性格は彼の最大の長所かもしれない。
なぜならば、それだけおおらか?ゆえに、彼は周囲に
あまり敵らしい敵を持たない。いや、もしかしたら兄の
ことをバックアップする人間のほうが多いかもしれない。
でも、時間だけはもうちょっと厳守してね、お兄ちゃん!

さて、私は兄と少し早目に簡単な夕食を取って、その時に
13回忌の説明もして、無事?自宅に帰らせた。

そして、帰りの電車の中、私は、兄への説明不足を
思いついたので、そのことをメールで伝えておいた。

『 お兄ちゃん、当日は普段着でいいって言ったけど、
  短パンに素足はダメだよ。ちゃんと考えて
  普通にしてきてね………        』

さて、数日後に兄から返事兼連絡があった。
私はその内容を見たとたん、思わず吹き出してしまった。

『 当日だけど、ケンタくんは
  半ズボンじゃ駄目かな?    』


ケンタくんは、兄の小学生の息子だ。










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2009年08月05日

なんでぺアシートなんだよ!


なんでぺアシートなんだよ!


「 あー、また、ドタキャンかよ…  」


そうつぶやくと、男性は携帯電話をパタンと閉じた。
そして、電話機前面のサブ画面で時間を確認すると、
今日、日曜日の夕方、これからどうして過ごそうかを
考えた。

男性は、つきあっている彼女と、よく日曜日の夕方に
待ち合わすことが多かった。
なぜならば、彼女はサービス業に従事しているため
土日の週末は休日ではなく、それで、お互い休日の
合わない2人は、その妥協点として日曜日によく
待ち合わした。
だが、どちらかと言えばそれほど約束を守る努力をしない
彼女は、よく待ち合わせ時間間際にメールで断りの連絡を
入れてきた。
一方男性は、よほど用事がないかぎり休日の昼間を
持て余し気味にすることが多かったので、ずいぶん早い
時間に待ち合わせ場所近くの繁華街に前もって出かける
ことが多かった。

「 さあ、誰かを呼び出すにも今からじゃなぁ…  」

そして男性は考える。時間は午後6時過ぎ。
今から1人で[ 食事兼お酒 ]をやるには少し時間が早く
もったいない気がする。

「 そうだな…、 あっ、そうだ。確か、近くに
  シネコンがあったはずだ…  」

男性は思った。今からシネコンに行って、もしうまく
上映開始時間が合えば、映画でも見てからかるく1杯
やって帰ろうと。
そしてその考えは正解で、男性がシネコンに行くと、
ちょうどその日の最終回、6時30分に始まる上映作品が
あり、また、その作品は男性が以前からまあまあ興味を
持っていたものだった。

「 OK! ばっちりだ! 」

さっそく男性は入場券売り場でチケットを買う。
その時、入場券売り場のちょっとおとなしいそうな
女の子が希望の席を聞いてきたが、男性は特にどこでも
よかったので、「 おまかせします 」と、言って
入場券を受け取った。

〈 ふーん、ここ、全席指定なんだ。
  でも、ってことは総入れ替えだな… 〉

そう思いながら男性は指定されたシアター入り口に
行く。すると、前回の上映はすでに終わっていて、
最終回の入場は可能だった。

〈 えーっと、Fの55は… えっ!  〉

男性が入場券に印字されたとおり席に行くと、なんと、
そこはカップル向けの『 ペアシート席 』だった。

〈 おいおい、なんでオレがペアシートなんだよ、
  なんかの間違いじゃねえのか! 〉

男性は、まず入場券の印字を確認した。合っている。
次に、シアター内の入場者の様子を見てみると、
シングルシートが6割に、ペアシートが8割ぐらいの
埋まりぐあいだった。

〈 ちょっと待てよ、オレだけひとりでペアシートって、
  どう考えてもおかしいよな。なんでなんだよ…  〉 

そこで男性はさらに考えた。 つまり、シングルシートも
もうすでにほとんど埋まっており、上映までに他の客が
バタバタと入ってくるのだと。

そして、6時 20分 上映 10分前。

男性の予想はみごとにはずれた。
上映開始時間は刻々と近づいてくるのにシングルシートは
ほとんどそれ以上埋まることはなく、その代わりに
ペアシートは少しずつ埋まっていき、やがて、ほとんど
満席状態になった。

〈 誰かと相席… と言っても誰もこねーし、 〉

そのうち、男性の思考は別の方向に向き出した。
それは、さっき入場券売り場にいた係りの女の子が、
変に気を利かして男性にペアシート席をあてがって
くれたのではないかと……


〈 あと、3分で始まるな…  うーん、ここ、
  絶対誰もこねーよな。 でも、こんなVIP待遇
  されても困るんだけどな…  〉

男性は、ひとりだだっ広いシートに座り考える。

〈 これって、絶対さっきの女の子にお礼を言いたい
  よな。でも、これが最終回だから、上映が終わって
  からじゃ遅い。たぶん、上映が始まったら入場券
  売り場も閉めるはず。うーん、どうしようか… 〉

6時 29分。 男性はいきなり立ち上がった。
そして、シアター内売店でポッキーを買うと、
そのまま出口に向かって走った。

出口で入場券の半券を見せて一時退場をお願いし、
それから入場券売り場に向かった。

〈 いた!  〉

さっきの入場券売り場の女の子はまだいた。
男性は、ほんの一瞬躊躇したが、それでも勇気を
出して言った。

「 あの、いい席をありがとう! 」

それだけ言うと、ポッキーを強引に入場券手渡し口から
手渡した。


ところで、どうして女の子がペアシートを男性にあてがった
のかはわからない。
また、男性は女の子に向かって言ったお礼とポッキーの
真意が女の子にうまく伝わったかもわからない。

でも、無事? 映画を見終わった男性は、すでに閉まって
いる入場券売り場を見ながら、
〈 今日はドタキャンもあったけど、まあまあいい日
  だったな。 さ、帰ろう、    〉
と、思いながら家路についた。






 

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2009年07月29日

誕生日 同日、3連発


誕生日 同日 3連発

居酒屋での会話 そのA



「 はい、これでオレの『蜂の一刺し、3連発』は終わり。
  で、今度はお前の番だぞ、  」
「 わかった、わかった。だけどさ、お前の話って、
  結局3人の女の子に「元彼」として暇つぶしの
  ネタにされただけだろ、 」
「 ま、そうだな 」
「 まあ、そうだなって、お前、涼しい顔してよく言うね、
  オレだったらそんなの耐え切れないけどな…  」
「 あのな、お前、女の子から電話がかかってきて
 『 ご飯、つれてって! 』だぜ。こんなおいしい話、
 なんでパスするんだよ! まあまあ、そんなことより
 お前の話を…  」
「 あっ、そうだったな。だけど、オレの話、お前のに
  比べてしょぼいけど、それでも…… 」
「 おいおい、言いだしっぺはお前だろ、さ、早く、 」
「 わかった。じゃ、言うけど、オレ、今までに誕生日が
  同じ子に3人会った…  」
「 え、じゃあ…  年も同じ? 」
「 いや、さすがにそこまではちがう。何月何日だけだ 」
「 ふーん、だけど、そんなのことちょっと無いよな… 」
「 だろ、 それでさ、一番目の子、この子、最初はオレに
  ものすごく尽くしてくれてさ、 それで、すっごく
  第一印象はよかったんだけどさ…  」
「 へぇ、じゃあ、その口ぶりだと、どっかで豹変でも
  したのかい? 」
「 いや、違う。そんなんじゃない。 その子、確かに
  オレにものすごく尽くしてくれるんだけどさ、それが、
  ある日ぱっと気づいた。つまり、その子はいつも
  自分がやりたいようにやっているだけで、オレが
  どうして欲しいかなんて全然考えていない子だった…」 


続きです…


「 なるほど、自己満足の世界だな。で、例えば? 」
「 そうだな、例えば、デートでなんか買ってあげた
  お返しに、後日、Tシャツとかをプレゼントして
  くれたんだけど…    」
「 それが、とんでもなく趣味に合わない、と、 」
「 そう。それで、申し訳ないけどその話題に触れない
  ようにして、もちろん着ることもない。すると… 」
「 そこで、機嫌が悪くなるわけだ、 」
「 いや、そうじゃない。それだったらすげーシンプルで
  いいんだけど、実際は、オレがそのTシャツを
  気に入らなかったのを察して別のを買ってきた。
  ところが…   」
「 やっぱり気に入らなかった、と、 」
「 そう、当たり。しかも、最初のよりも、もっと
  チャレンジャーなやつでさ、 まあ、終始そんな
  調子だったんで最後はいいかげん嫌になってさ… 」
「 ははっ、痛いな、それ。まあ、だいたい話の
  流れは見えてきた。つまり、お前、その子のことが
  トラウマになって、後日、同じ誕生日の子に会って
  ぞっとしたわけだ。でも、そんな話もめずらしい、」
「 まあまあ、続きも聞けよ。次の子はさ、同日誕生日が
  2度目だからそれほど驚かなかったけど、その子、
  異常に自分の誕生日をカウントダウンするわけ。
  すると、オレ、前の彼女のこともだんだん思い
  出してきてさ、なんか、真綿で首をしめられてる
  気分になってきてさ…   」
「 あはははっ、お前、面白い! いやー盛り上げって
  きたな…  すいません、こっち、生中、2つ! 」
「 で、さ、そろそろしめるけど、次の3人目はすげー、
  最近の話。お前、隣りの課の「○○ちゃん」、当然
  知ってるだろ! 」
「 えっ、○○ちゃんかよ、 すると、もしかして… 」
「 そう、その、もしかして。 オレ、自分で言うのも
  なんだけど、ものすげーがんばって彼女とご飯まで
  こぎつけたわけ。それで、なんか、自然に誕生日の
  話になって、すると…  」
「 同日誕生日3連発だったわけだ、 」
「 そう。そのとおり。ところが、オレもそこまで
  こぎつけるのに、ありとあらゆる手を使って苦労した
  わけだし、それで、そんなつまんねーことぐらいで
  ひるんでどうするんだって、自分で自分をふるい
  たたせたわけ。ところが…  」
「 どうしたわけよ? 」
「 そう、つまり、○○ちゃんな、オレが誕生日を聞いた
  とたん、一瞬固まったのを見逃さなかった、   」
「 ほう、それで? 」
「 それから、ダメ押しで指摘してきた。以前、付き合った
  彼女が私と同じ誕生日なんでしょ、って、 」
「 またまた痛いな。 で、 なんて答えたの? 」
「 それがさ、オレもとっさに、ここで変に隠し立て
  するとよけいドツボにはまりそうな気がしたんで、
  それで正直に答えた。すると…  」
「 はいはい、いいから先を言えって、 」
「 その後は、オレの昔話だけでさんざん盛り上がって、
  気がついたらその日のデートタイムはおしまい。
  それでも、なんとか次につなげようといろいろ試みた
  けど、結局、オレって彼女からしたら単なる
  おもしろい人で終わってしまったみたいだわ…  」
「 なるほどね。だけどさ、お前の話って、オレの
 『 蜂の一刺し3連発 』よりずっと痛いんじゃない? 」








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2009年07月28日

蜂の一刺し、3連発

蜂の一刺し、3連発


居酒屋での会話 その@


駅近くの繁華街にある某大手チェーン店の居酒屋。
店内は会社帰りのサラリーマンで混雑しており、
その一角で、2人組の会社員らしき若い男性が、
生ビールを片手に談笑している。
つまり、ごく、自然な光景がそこにあった。


「 なあ、いきなりだけど、 」
「 なに?  」
「 最近、なんか、ぞっとしたことってある? 」
「 なんだよ、急に?  」
「 だからさ、最近、ぞっとして背筋が寒くなったり
  したことってあるかって聞いてるんだよ、 」

すると、聞かれた男はビールジョッキを持ったまま
少し考えて、それから答えた。

「 まあ、あるにはあるけど、 」
「 へへっ、やっぱりあるんだ。じゃあ、言って
  みろよ、 」
「 べつにいいけど、だけど、お前、自分がなんか
  言いたいからそんな話ふったんだろ?   」
「 ま、それもあるけど、それより先を言え、先、 」
「 まったく、勝手なヤツだな。だけど、最初に言っとく、
  オレの話、聞いてもたいしてつまんねーから、  」
「 いいよ、ぜひ、聞かせていただきたい、 」
「 わかった、わかった。 じゃ、言う。 題して
  『 蜂の一刺し、3連発 』! 」
「 はあ、なんだ、それ?  」
「 だから言っただろ、 オレの話はオカルトでも
  ホラーでもないからつまんないって、 」
「 いいから続けろって、 」
「 わかった、それじゃ始めるけど、お前も知っての通り、
  オレ、今まで女の子に泣かされた経験多数、 」
「 知ってる、知ってる、 お前とは同期で長いもんな、 」
「 そして、その中のワースト3が……  」
「 あっ、わかった、その女の子たちが、みんな
  かたっぱしから蜂に刺されたんだろ、 」
「 ピンポン! はい、当たり。次、君の番! 」
「 おいおい、ちょっと待てって、それがなんで
  ぞっとする話なんだよ?  」 
「 だから、つまんねー話だって、  」
「 つまんねー、か、面白いかはオレが決めるって、
  はい、続きを、 」
「 ホント、しつこいなー だけどさ、これって
  いちいち説明すると、ホント、長いんだけど、 」
「 じらすなって、 前置きはいいから、さっさと
  本題に入れってば、 」
「 うーん、じゃあ、言う。 あのな、1人目の
  女の子は家がけっこう金持ちの子で、 」
「 おっ、いいね、  逆玉じゃん!  」
「 そんないいもんじゃないって。 続けるけど、
  それで、その子、友だちと川にキャンプ兼カヌーに
  行って、そこで、食事の準備かなんかの最中に
  運悪くスズメバチの巣に触っちゃったらしくて… 」
「 あちゃー、痛そう。それで、けっきょくスズメバチに
  襲われたってこと? 」
「 うん、ふもとの救急病院の駆け込んだって。
  なんでも、ほっとくと最悪ショック死することも
  あるらしい。それでさ、彼女の場合、親が金持ち
  だし、性格がすげーきつい子だったんで、オレ、
 『 女王蜂が兵隊ハチに 襲われてどうすんだよ、』って、
  内心、ものすごく笑っちゃって……  」
「 うわっ、ひど! それで、次は? 」
「 えーっと、次か…  次は確か、 あっ、そうだ、
  2番目の子も山でバーべキュー中にスズメバチ、 」
「 お前の昔の彼女たち、ちょっと危なくないかい? 」 
「 まあ、待てって、 それでその子、いっしょにいた
  男友だちに[ 川に飛び込めっ、]って言われて
  そうしたらしい。 もちろん、着替えなんか全然
  持参もしてないのに、  」
「 あっはっはっ、 そりゃ災難だな、それで、次は? 」
「 おう、これが最後だ。最後の子は、なんかよく
  わかんねえーけど、その子の母親とすげえ仲良しで
  いつもいっしょに行動する子でさ、  」
「 ふんふん、お母ちゃんと仲良しね。ま、よくある話だ、
  それで、どうなったの?  」
「 その日も、母親の運転手役で植木に使う野生の
  植物あさりをするために、山へ行ったらしい… 」
「 それで、『みたび』スズメバチの攻撃を…  」
「 そう、それ!  だけどさー、 こんな話が3連発も
  あるといいかげん、ぞっとしたわ。まあ、オレは
  その場にはいなかったからいいけどさ、 」
「 ふ−ん。 で、話の結論として、お前のことを
  さんざん泣かした彼女たちが、お前に代わって
  スズメバチによってお仕置きされたってこと? 」
「 まあ、結果的としてはそういうことになるかな。
  ちょっと可哀そうだけどさっ、  」
「 いや、ちょっと待て! お前の話にはひとつ『穴』が
  ある。お前、その話、誰か他人から聞いた話か? 」
「 いや、3つともそれぞれ本人の口から直接聞いた、 」
「 もうひとつ聞く! その3人、お互いが知り合いで、
  お前の知らないところでつながっているとか? 」
「 いや、それは絶対にありえない。オレが全然関係の
  ないところでそれぞれ知り合った子たちだから、 」
「 ふーん、わかった。じゃあ、『穴』を指摘するぞ、
  その子たち、お前をさんざんふりまわして泣かせる前に
  スズメバチに襲われただろ、 だったら順番が逆だから
  お仕置きってはちょっとおかしい! 」
「 はいはい、ナイス指摘です。でも、お前、そんなに
  飲んでて、よくそんなこまかいことまでチェック
  できるな!  ホント、感心するわ、 」
「  へへっ、楽勝じゃん!  だけど、お前、確かに
  『 スズメバチ3連発 』なんて話、めったに
  聞かないけど、その話、そんなに怖い話か?  」
「 まあ、待てって、 まだ話のオチを言ってないから、 」
「 話のオチ? 」
「 うん、話のオチ。じつは、さっきのハチに刺された話、
  これって全部、彼女たちと完全に別れてから聞いた話
  なんだ。しかも、その時彼女たち、さっさと新しい男と
  付き合ったり、結婚なんかもしちゃっているのに、
  それでもずるずる彼女たちからコンタクトがあって、
  その時にメシ食ったりしながら聞いた話なんだ。
  ホント、女の人は怖いよ……  」
 









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2009年07月27日

育児! 育自! 育慈!

育児! 育自! 育慈!

「 しかし、あんたがね…  」  

平日の午後、比較的新しい、2階建ての
2DKアパートの1室で2人の女性が
たわいもないおしゃべりをしている。
そして、部屋の片隅にはベビーベッドが
置いてあり、そこには赤ちゃんが眠っている…

「 それでさ、一般的な話だけど、そんなに
  家にこもっていて育児ノイローゼなんかに
  ならないかい?  」
「 ううん、大丈夫だよ。私、今の生活、かなり
  気にいってるから…  」
「 だけどさ、あんた、あれだけ「ギャル」を通す
  ことに命かけてたのに、こんなんじゃ退屈だろ?
  それに、ダンナだって帰りが遅いし、 」
「 しかたないよ。長距離(運転手)やってるから。
  だけどね、子供ってホントにかわいいよ。でも、
  ぐずった時は宇宙人かっ、て思うぐらい
  理解不可能だけど、     」
「 あははっ、宇宙人か、まっ、今のところは
  あたしの知らない世界だな…    」


そうして、そろそろ夕飯を準備する頃になり、
友人らしき女性は帰っていった。
  
ところで、現在育児の真っ最中らしき女性は、
実際、かなり充実した毎日を送っていた。

なぜならば、彼女は妊娠期間中にたまたま始めた
ブログの制作がけっこう性に合っていたようで、
どうしても自宅で過ごす時間が長い彼女にとって、
ネットやブログによる外の世界との接点はものすごく
新鮮だった。
だが、妊娠がわかるまでの彼女の女子高時代は、
いかに制服のスカートを短くして繁華街を闊歩するか、
という、文字通り体をはったアナログ的な自己主張を
貫き通す毎日だった。
しかし、当時つき合っていた彼と妊娠を機に結婚し、
現在に至っている。


「 あっ、このコメント、ちょっとイヤだな…  」

パソコンの操作については、比較的すんなりと
上達できた彼女だが、実際のところ、ブログの
立ち上げに関しては少し遠回りをした。
例えば、最初に使ったブログサービスは、
プロバイダーによる完全フリーのもので、
広告がそれほど大きくないのが気に入って
利用を始めたが、実際に使用してみるとブログ
作成処理に時間がかかり過ぎるのに嫌気をさして、
それで思い切って他のサービスに乗り換えた。

また、現在までに複数のブログを立ち上げた
彼女だが、操作ミスでせっかく書いた記事を
一瞬のうちに消し去ってしまったことなど、
これまでに、笑うに笑えない失敗談もかなり
たくさんある。

もちろん、ネットの世界は基本的に相手の顔が
見えない仮想(デジタル)の世界には違いないが、
それでも、慣れてくればなんとなく嘘と真実の区別も
見えて気がするし、それに、今の彼女にとって最大の
メリットは、いくらネットに没頭していてもひとたび
赤ちゃんが泣き出せば、なにがなんでも現実の世界に
引きずり戻されることだ。

彼女は、今の生活をけっこう気に入っている。










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2009年07月23日

黒猫のタンゴ

黒猫のタンゴ


〈 なんで、こんなところにネコが…  〉

秋の気配が日ごとに深まる日曜日の朝、
男性は、日の出がずいぶん遅くなったと思いながら
自宅近くの駅に行った。
その駅は立体高架構造になっており、まず、
エスカレーターで改札口まで上がる必要があり、
さらに改札を通過してからプラットホームまで、
もういちどエスカレーターか階段で上の階に
上がらなければならなかった。

そして、駅に到着した男性は駅、高架下一階の
連絡通路で、ほとんど黒猫なのだが、唯一、
鼻の横に白い毛が混じっているネコに遭遇した。

もちろん男性は、日曜日の早朝、そこの駅にネコが
いることにものすごく違和感を覚えたが、だからと
いって自分には関係のないことだとも思ったので、
そのままエスカレーターに乗って改札口まで行き、
そして、時刻表を確認してから目的地方向の
プラットホームに上がった。


ところで、男性の外出目的は婚約者と会うため
なのだが、彼女が指定してきた時間は日曜日の
ランチタイムで、場所は彼女の自宅の最寄り駅だった。

〈 あーあ、せっかくの日曜日なのに昼メシかよ。
  なんか、まずい雰囲気だよな…        〉

男性はうすうす感じていた。彼女とは、もうすでに
結納も済ませて指輪も交換済みなのだが、なぜか、
式の日取りなど具体的な日程が固まってくるにつれて
彼女の態度が硬直してきていることを… 
だが、時間がその歩調をゆるめてくれることなど
絶対になく、結婚式の日取りは着実に近づいてきていた。

〈 やっぱ、見合い結婚はダメだな…  
  お互い、妥協の産物だしな…         〉


……続きです

彼女の自宅はとなりの県にある。そして、そこまでは
高速道路で1時間強ぐらいなのだが、電車でいくと
乗り継ぎが悪く2時間以上かかる。
だが、「今日の雰囲気だと間違いなく車が必要ない」
と、思った男性は、少し早起きして電車で出かけること
にした。

男性は電車に乗った。だが、その車両はたまたま
特急電車の通過待ちをしており、日曜日の早朝のため
車内はがらがらで乗客は15人ぐらいしかいなく、
男性は、しばらくは発車しそうにもないその車内で、
今日、彼女とどんな話の展開になるのかをぼーっと
考えていた。

〈 あーあ、この半年、時間のムダだった… 〉
〈 悩むぐらいならさっさと断ってこいって、 〉
〈 半年間に断った合コン、もったいない… 〉



「 おい、あのネコ、なに? 」
「 ほんとだ。なんで、こんなところに? 」

その時、突然聞こえてきた会話によって男性は
われにかえった。その会話の主は電車入り口付近
にいた10代のカップルで、おそらく一晩中遊んで
これから朝帰りするのだろう。だが、どうも帰るのは
男の子だけのようで、相手の女の子は電車には
乗らず、ちょうど入り口をはさんで今朝の別れを
惜しんでいた。

そして、男性も反射的に車外、プラットホームに
目をやると、そこには、まさしくさっき一階の
連絡通路で見た「98%黒猫」がいた。

〈 え、うそだろ! ここ、確か3階…だったよな、〉

だが、その黒猫はみんなの関心や疑問などいっさい
お構いなしで、さらに入り口付近のカップルの足元を
かすめるようにして、とうとう車内に乗り込んできた。

[ ???????????      ]

男性を含む、車内にいた全員の乗客は黒猫に
釘付けになった。
だが、それと同時に車内の雰囲気は
「 面倒にかかわりたくない 」を感じさせる空気に
急変し、誰もが黒猫に近寄ろうともしなかった。
そして、そのようにものすごく変な緊張感が漂う車内で、
なぜか黒猫は、少しずつ男性のもとに近づいてきた。

〈 ちょ、ちょっと、こっちに来るなって、 〉

だが、男性の願いも虚しく、黒猫は男性の足元まで
来ると、なんと、男性の座っているベンチ座席の横に
ひょいと飛び乗った。

「 ちょっと、待て、俺の猫じゃない! 」

思わず叫ぶ男性。そして、その瞬間、車内は爆笑の渦。
だが男性は、この場での自分の窮地を収束させるために、
思考をフル回転させた。

まず、その黒猫を抱きかかえて、それから入り口付近に
いたカップルのところに行き、そして男の子に聞いた。

「 ねえ、彼女、いっしょに帰らないよね?
  ここの子? 」
「 あっ、はい、そうですけど…  」

次に男性は、女の子のほうに向かって、

「 ねえ、この子、たぶん迷いネコだから、このまま
  電車で行っちゃうとまずいよねー、 それで、
  わるいけど、この電車が出たら、この子、
  駅の外ではなしてよ、 」
「 えっ、えー、いいですけど…  」
「 じゃ、おねがいね……   」





婚約者との話を終えて、来た時より指輪の分だけ
荷物を増やして帰路につく男性。

〈 やっぱり婚約解消か…  でも、かえって
  さっぱりしたな。 このまま、お互いが
  煮えきれないまま結婚したって、先では
  長続きしないのが見えてるし… 〉   

〈 だけど、朝のネコ、あれ、いったいなんだっただろ、
  なにかのお告げ… それにしてもリアルすぎる… 〉


どうやら男性の思考は、婚約解消したことより、
「日曜日の朝にまとわりつかれた黒猫」のことで
完全に占領されているようだ。











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2009年07月21日

生まれ変わりは「 ふとん 」?


生まれ変わりは「 ふとん 」?



「 ねえ、こんど生まれ変わるとしたら何がいい?」

「 えっ? 」

居間で彼女とテレビを見ていたときだった。
彼女が唐突に聞いてきたその質問に、男は
一瞬黙り込んだ。が、しかし、何もなかった
ような素振りであいづちをうった。

「 そうだな…  」

しかし、男の態度は誰が見ても明らかに
「うわのそら」で、彼の意識はどこか記憶の
かなたに飛んでいってしまったようだ。

男は、3年前にふられた彼女のことを
思い出していた…  




「 あのね、こんど生まれ変わるとしたら、
  何になりたい?  」
「 なんでもいいの? 」
「 なんでもいいよ。芸能人でも、スポーツ選手でも
  動物でも、なんでも! 」
「 モノ…  でもいい? 」
「 うん、いいよ     」
「 じゃ、ふとん 」
「 はあ、布団? 」
「 うん、ふとん  」
「 ………なに、それ?  」
「 いや、だってさ、ほら、オレ、会社で激務だから
  いつも疲れているし…  」

「 だけど、布団はないでしょ、何かほかには? 」
「 そんな急に言われても、だからさ、いつもいつも
  眠いのを我慢してるって言いたかっただけだよ 」
「 わかったわ。じゃ、布団でいい。でも、いつも
  若い女の子が使ってくれるとは限らないわよ。
  もし加齢臭がひどいおじさんだったら
  どうするの?  」
「 ちょ、ちょっと、だから、ふとんはもういいって、」
「 それに、子供だとおねしょされるかもしれないし、
  一人暮らしの子に万年床で引きっぱなしにされて
  一生布団干しされないまま捨てられるかも
  しれないし、あと、人のエッチをさんざん見せ
  つけられたままなすすべもなく指をくわえて
  黙っているだけ、 そんなのでもいいの?  
「 いや、だからさ… (今日はそうきたか! ) 」


彼女はいわゆる「いじり」キャラで、いつも男の
ささいなミスなど、あげあしをとることでストレスの
発散をしていた。
一方、男のそのことをじゅうぶん承知しており、
彼女が絡んでくるうちは機嫌がいいのも知っていた。


 


「 ねえ、どうしたの? 急に黙り込んで…  」
「 あっ、いや、なんでもないよ。えーと、
  生まれ変わるとしたら何か…  だったね?」
「 そんなの、もういいよ、 それより、見て、
  あのピン芸人! ほんと、バカ、     」

そう言った彼女は、テレビのバラエティ番組を指差して
大笑いしている。

〈 あー、この子もかわいくていい子なんだけどな…
  だけど、「ふとん」に生まれ変わりたい、なんて
  言ったら、「 はあっ、」って顔されて、あとは
  会話が続かないだろうな…          〉


〈 前の彼女、たぶん、オレのこと、いじり飽きたん
  だろうな… それに、今でもどこかで誰かを
  いじりたおしてるんだろうな…         〉


男は、今でも以前の彼女に未練がいっぱいのようだ…




   
  











posted by jekugun at 14:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2009年07月17日

ギャルは苦手だ…

 
 ギャルは苦手だ… 

男性にはささやかな楽しみがある。
天気のいい日曜日の午後、郊外の比較的
静かで雰囲気のいいマクドナルドへ、
わざわざ車を走らせてお茶をすることだ。

だが、彼女や友人とそこに行くのではなく、
彼の愛犬、ミニチュアダックスの『 フク 』
と行くのがルールであって、それがもし
フク以外の他の誰かと行くのなら、そこに行く
意味なんて全然ない。


さて、今日も天気がよく気持ちのいい午後を
過ごせそうなので、男性はフクと一緒に車に
乗った。そして、最初に男性はフクを店舗先
に設置された屋外用テーブルとイスのところ
に行き、フクのハーネスをイスに結んだ。
もちろん、利口なフクは、そこで待っていなさい
と言えばずっと待っているので、そんなことを
する必要などないのだが、一応、念のため。

そして、店内で注文したメニューを受け取って、
外で待っているフクのもとへ戻る。ただし、
男性のものだけ注文し、フクのぶんはいつも
持参している。
ドッグフードやミネラルウォータなど、
そのつど違うが、体に悪いので、フクには
人と同じものは絶対にあげない。

おもてに出ると、そこにはフクといっしょに
小学校の4,5年生ぐらいの知らない女の子が
2人いた。よくある光景だ。
もちろん男性は気にせず、イスにすわってフクの
ハーネスをほどいた。そして、注文したコーヒーを
飲みはじめる。

「 おじちゃん、この子、名前は? 」
「 フク 」
「 あー、フクちゃんか! 」

そうして、2人の女の子は再びフクと遊びはじめた。
だが、どうも様子がおかしい。
1人の女の子は子供らしく?フクに夢中なのだが、
もう1人の女の子はそれほど犬が好きではない
みたいで、いつの間にかノートパソコンで書き物を
している男性に興味を示している。

「 おじちゃん、 」
「 うん? 」
「 どうして、サンダルなのに靴下はいてるの? 」
「 え、なんで? 」
「 だって、おじちゃん、サンダルと靴下だから 」
「 ………  」
「 おじちゃん、サンダル、素足ではいたら
  すごく気持ちいいよ!  」

〈 おいおい、この子、まだ小学生だろ、
  それじゃギャル目線だって、     〉

男性は世間一般で言われる女子中高性『 ギャル 』
が大の苦手だった。それで、理解不可能な
彼女たちの存在など、最初から見ないふりを
して無視するのが得策だと考えていた。
もちろん、できる限り関わりたくなかった。

「 おじちゃん、フクちゃんに( マック )ポテト、
  あげちゃ、だめ? 」

「 ごめんね。フク、すぐ、おなかが痛くなるから… 」
〈 おいおい、だめだって。フクの寿命が縮む、 〉

「 ふーん、そうなんだ… でも、なんか欲しそう… 」
〈 あたりまえだろ、あー、この子たちの
  保護者はどこ?    〉

「 えーっと、お父さんやお母さんは? 」
「 いないよ。おうち、近くだし、 」
〈 地元の女の子だって、最悪。うーん…  〉

「 じゃ、ソフトクリームでも食べる?
  おじちゃんが買ってあげるから買ってきて? 」
〈 そのあいだに逃げよう…  〉

「 ううん、さっき食べたからいらない。
  それに、ここでソフトクリーム食べたら
  フクちゃんが欲しがるからかわいそうだよ! 」
「 ………   」
〈 知ってたらポテトをやるなんて言うなよ、 〉
  
その時、とうとう男性は奥の手を出した。

「 あ、ごめんね。フク、そろそろウンチの時間だ 」
「 えっ、ウンチ? 」
「 うん。ウンチ。フクね、うちでしか
  ウンチしないから。それじゃ、  」
「 ふーん、そうなんだ。 じゃ、おじちゃん、
  また、きてね!  」
「 はいはい、またね 」

そう言うと、男性はノートパソコンをあわただしく
片付けて、コーヒーの紙コップをゴミ箱に捨てて
その場をあとにした。


帰りながら男性は思う。

〈 まだ小学生なのに早いな――。 
  だけど、どっちにしてもギャルは苦手だ… 〉












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posted by jekugun at 20:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記